高野和明
1964年東京都生まれ。1985年より、映画・TV・Vシネマの撮影現場でメイキング演出やスチルカメラマンなどを担当。映画監督・岡本喜八氏の門下に入る。1989年渡米。ABCネットワークの番組にスタッフとして参加。ロサンゼルス・シティカレッジで映画演出・撮影・編集を学ぶ。1991年同校中退後、帰国して映画・テレビなどの脚本家となる。
2001年『13階段』で第47回江戸川乱歩賞受賞。

お勧め度
★★★★★
★★★★☆   
題名
グレイヴディッガー
  13階段
   

表 紙
     
装 丁
2002年07月31日
講談社
1段組
382P(720枚)
1700円
2001年08月06日
講談社
1段組
344P(650枚)
1600円
   

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グレイヴディッガー

本のおさわり
傷害『13階段』の衝撃、再び! 疾走するノンストップ・スリラー!
都内全域で、一夜のうちに起こる無差別大量殺人。中世暗黒時代、異端審問官を皆殺しにした「伝説の死者」が、現代の東京に蘇る。 圧倒的なスピード感で展開する、待望のエンターテイメント巨編、ここに登場!

都会の闇を生きてきた悪党・八神俊彦は、運命の一日を迎えるはずだった。生き方を改めるため、自ら骨髄移植のドナーとなり白血病患者の命を救おうとしていたのだ。
ところがその日、都内で未曾有の無差別大量殺人事件が発生。大都市・東京は、厳戒態勢に突入した。そして友人の死体を発見した瞬間から、八神の必死の逃走劇が始まった。
警察、謎の集団、正体不明の殺戮者から逃げ切らなければ、八神の骨髄を待つ白血病患者が死ぬ。八神は生き残れるのか? 謎の殺戮者・グレイヴディッガーの正体とは?
著者渾身のスリラー巨編が、ついにその全貌を現す!(帯より)
江戸川乱歩賞受賞第一作


午前10時頃から読み始めて、息つく暇も無く、夕方まで一気に読みきってしまった。
評点4プラスをつけた昨年の江戸川乱歩賞に続く、受賞後第一作に期待が高まる。この作品は、見事に期待に応えてくれた。

憎めない悪党、主人公である八神俊彦は、読み始めてから30ページ辺りで、いきなり怪奇な殺人死体に直面し、どうしようかと思う間もなく、怪しげな男たちに追われることになる。 八神は、自己が作り出した不利な状況ゆえに警察にも頼れず、一人逃避行を続けるのだが、その展開が、とにかくスピード感があって面白い。 八神が船を使おうが、自転車で逃げようが、果てはレールの上を伝って逃げるのだが、追跡者たちは何処からとも無く追いついて、八神の前に現れるのだった。 なんで八神の所在が分かるのか、インチキくさいなと途中で不満を感じるのだが、作者は、ちゃんと答えを用意しておいてくれた。これが、現実に出来るかどうかは多少疑問があるが、理屈では出来そうな話になっているので、フィクション・エンターテイメントとしては問題ない。

八神を追う敵が何者かに襲われる、敵は複数いるようだ。訳の分からない展開に読者は翻弄されるが、各場面場面の展開がスピード感のあるアクションを伴っているので、疑問に文句を言っている暇が無い。どんどん引っ張られて読み進めるうちに謎が解けていくのだが、このストーリー展開は見事だ。ところどころに、ユーモアっぽい表現があって笑わせてくれる。例えば、
オールナイト映画の題名を『のび太の大冒険』と答えた八神を怪しんだ警官が

「八神だな、抵抗するようなら公務執行妨害罪で−−−」
八神は抵抗した。両手でハンドルを掴み、持ち上げた自転車を 正面の警官めがけて振り回した。

という行は、面白かった。

ストーリーの題材としては、骨髄移植のドナーカード、公安部出身の代議士、中世の魔女狩りの裁判官役であった異端審問官を虐殺したとされるグレイヴディッガー(墓堀人)伝説、加えて、刑事部と公安部の対立、更には、パソコン解読技術や、八神の小悪党経歴などうまく組み合わせて、全体構成を作っている。 380ページ全体に渡って、飽きさせずに、文字通り一気に読まされてしまった。

お勧め度5。
by
缶ぽすと 2002年12月25日記

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13階段
本のおさわり
傷害致死罪で懲役2年の実景を受け、刑期を2ヶ月残して仮出獄した三上純一は、刑務官の南郷正二に誘われて、確定死刑囚・樹原亮(きはらりょう)の冤罪の証拠を探す仕事を南郷と共に開始した。死刑執行の可能性を考えると、残された期間は3ヶ月、成功報酬は1,000万円。
事件当時の記憶を失っていた樹原がふと思い出したキーワードは「階段を上っていた」。 二人は、事件現場付近の階段を求めて探し回ることから捜索を開始した。徐々に過去の記録が暴かれていく中、死刑執行の準備も確実に進んでゆく。
第47回(2001年)江戸川乱歩賞受賞作品

死刑と言う重いテーマを真正面に捉えて、なおエンターテイメント性も失わず、ずしんと来る読み応えがある
今年の江戸川乱歩賞はレベルが高い。1995年に『テロリストのパラソル』が、新人賞である江戸川乱歩賞と直木賞を同時受賞したことがあったが、この作品もそれに優るとも劣らない出来だ。
死刑反対・賛成の各論が時折新聞紙面をにぎわすが、裁かれる犯人の立場での論議に留まらず、刑を執行する立場でここまで迫った「読物」は少ない。


死刑執行に至るまでには、検事が死刑の求刑書を提出し、最終的に裁判長が死刑判決を出す。その後法務省内部で「死刑執行起案書」が作られ、各担当責任者の決裁を得て、最後に法務大臣のサインがなされる。執行は、検事が携えてくる「死刑執行指揮書」に則って、拘置所で行なわれるが、ここでも数名の人間が職務として執行に関わることになる。各過程でそれぞれの人間が、ひとりの人間をを殺すことに関わったと言う重石を心に載せられるのである。特に、最後に処刑のボタンを押す刑務官の心境はいかばかりかと。

このテーマを通して、刑務官の生い立ち、日常、また、家族の苦しみなどをせつなく書き通している。勿論、刑務官の全てが、南郷のような苦しみを抱えているのではないだろうが、刑務官という職業について考えさせられる。

犯罪を犯した犯人の家族も、悲惨な状況に陥ることが多い。身内から犯罪者を出した家族の心苦しさから、被害者に対して精一杯の補償の約束をして、食うや食わずの生活に陥ってしまう現実を描写している。

警察、検察が調べ尽くした事件の残りかすを拾い集めたところで、冤罪を晴らす新しい証拠など簡単に出るものではない。被害者の宇津木耕平が保護司を務めていたのだから、これに関わる動機調査や多額の現金遺産についての捜査が甘かったように思う。もっとも、「犯人でございます」状態で逮捕された樹原亮が被害者のカードを所有していたことで、他の可能性が極めて弱くなってしまった可能性はあるのかもしれない。

冤罪調査依頼人のやりかたは、いかにも小説っぽく現実性に乏しいが、このくらいの創造性がなければ面白い小説にならないのなら、許容範囲だろう。
お勧め度4プラス。

by
缶ぽすと 2001年09月23日記

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